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Dr. シャイナーの蔵書票

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 「利益のためでも名声のためでもなく ni zisk ni slávu」 という言葉が添えられているのはチェコの青少年体育運動 「ソコル」 のリーダー、ヨゼフ・シャイナ-博士(Josef Scheiner 1861-1932)の蔵書票です。シャイナーは1918年のチェコスロヴァキア独立の際に国軍の創設に尽力したことでもチェコでは知られています。
 赤地に交差する尾を持つ銀獅子は、ボヘミア王国以来のチェコ紋章です。チェコを象徴するライオン像と重ねて描いているのはソコルの青年で、シャイナーが軍の創設にかかわったことを示す剣を持っています。
 ミュシャは月桂樹の枝とスラヴ菩提樹
(チェコの国の樹)のハート形の葉を、ソコルのシンボルマークである円形にデザインして、私心なくチェコにつくしたシャイナー博士を讃えました。背景色の赤はチェコの栄光を表すとともにソコルのシンボルカラーでもあります。
 オリジナルの国章とは異なるのは、国軍創設をあらわす「剣」と、もうひとつ、交差するライオンの尾が二つの輪、「月桂樹」と「スラヴ菩提樹」の輪になっていることです。円はソコルのシンボルであり、スラヴ菩提樹の輪の中のハートは「チェコの心」をあらわしています。
 蔵書票の制作時期は特定されていませんがチェコ独立直前頃のデザインと考えられます。

スラヴ菩提樹のハート形の葉を頭に飾る"スラヴィア"
  左から 『スラヴィア』1908年、『プラハ歌と音楽の春の祭典』1912年、『1918-1928(チェコスロヴァキア独立10周年)』1928年

 左 ソコル協会 初代会長 インドジフ・ヒュグナー Jindřich Fügner (1822-1865)
右 初代副会長 ミロスラフ・ティルシュ Miroslav Tyrš (1832-1884)

ヨゼフ・シャイナー
Dr. Josef Scheiner (1861-1932)
1948年ソコル大会に合わせて発行

赤地の銀獅子はチェコ(ボヘミア)を表し、大統領旗にはボヘミア王冠領を示すスラヴ菩提樹と、「真実は勝つ」というヤン・フスの言葉が添えられている。
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 バラの花束とともに「NI ZISK NI SLÁVU 「 利益のためでも、名声のためでもなく」の文字が添えられている1948年第11回ソコル大会切手。
 この年2月の共産党クーデターによってチェコスロヴァキアは社会主義国になり、ソコル大会で共産党への国民の反発が強かったため、大会はこの第11回で禁止された。
 かわりに「スパルタキアード」という社会主義礼賛のマスゲームを共産党主導で創設し、社会主義体制の40年間続けた。「ソコル大会」が復活したのは自由化後の1994年になってからだった。
 切手には、頭に月桂樹を飾りスラヴ菩提樹をかかげる女性(スラヴィア)がソコルの若者を祝福する場面を描いている。

 チェコ系市民とドイツ系市民の分断が進む中、「オーストリアからの独立を目指して青少年の身体を鍛えるため」というソコル運動はともすれば政治活動化・軍隊化しがちで、実際、外部からも内部でもそのような圧力はあった。
 しかしヒュグナーとティルシュの2人は政治化・軍隊化を頑として拒絶した。ヒュグナーには「ハプスブルク王朝の圧政、皇帝、教会への抵抗と反感はチェコの民主主義精神と自由主義精神によるもの」という理念があったからである。

チェコ共和国の国章(上 略章)と大統領旗(下)