チェコ・フィルハーモニー管弦楽団 創立100年記念CDアルバム
ミュシャは 「私が生涯愛したものは教会と音楽と美術である」 という言葉を残しています。
音楽の国チェコを代表する世界屈指のオーケストラ、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団(Česká Filharmoie)は1996年に創立100年を迎えました。記念のCDアルバムのジャケット表紙はミュシャの 『プラハ城切手』 をアレンジしたものです。チェコの人たちが『プラハ城切手』をどのように位置づけ、ミュシャをどのような芸術家とみているかがよくわかる例のひとつです。
アルバムの演奏指揮はチェコの名指揮者カレル・アンチェル(Karel Ančerl 1908-1973)です。アンチェルはユダヤ系だったため1942年にナチスによってアウシュビッツ強制収容所へ送られ、自身は奇跡的に生還したものの、家族のほとんどがガス室で殺され、音楽家仲間の多くも失いました。
1948年の共産主義化でクベリーク(クーベリック Rafael Kubeíik 1914-1996)がチェコを去って弱体化したチェコ・フィルをアンチェルは支え、世界最高レベルのオーケストラに育て上げました。
1968年の 「プラハの春」 改革を圧殺するためにソ連を中心としたワルシャワ条約機構軍がチェコに侵攻したちょうどその時アメリカに演奏旅行中のアンチェルはチェコに戻れなくなり、亡命生活のままカナダで亡くなりました。カナダでは小澤征爾の後任としてトロント交響楽団常任指揮者に迎えられ、グレン・グールド(ピアニスト Glenn Herbert Gould 1932-1982)と共演したベートーヴェン ピアノ協奏曲「皇帝」の映像などで名演をしのぶことができます。
生前は祖国に帰れなかったアンチェルですが、今はプラハのヴィシェフラッド墓地に眠っています。
1959年にはチェコ・フィルとともに来日して名演の数々が話題になりました。たまたま同時期に来日していたカラヤンとウィーン・フィルハーモニーの演奏よりも高く評価する人も多く、没後50年の今も日本には熱心なファンが数多くいます。
アンチェルの指揮では、どの音楽もまさに今その瞬間に生まれ出ているような新鮮さがあり、誰もが感動を覚えます。
アルバムには、ミュシャの 『スラブ叙事詩』 とも関連の深いスメタナの『わが祖国 Má Vlast』 はじめ、チェコ音楽の粋が収められています。
カレル・アンチェル Karel Ančerl
1908-1973