切手と紙幣

プラハ城
 中央は「プラハ城」と呼ばれる「フラッチャヌィ城」です。城の中心にある「聖ヴィート大聖堂」の屋根と尖塔だけがシルエットで見えますが、チェコ国民には一目で「フラッチャヌィ城」とわかります。10世紀の聖ヴァツラフの城の上に数百年かけて建設が進められました。チェコの苦難の歴史とともに歩み、今もチェコ共和国の大統領府が置かれている現役の城です。
 右手前のドームと塔は聖ミクラーシュ教会。「聖ミクラーシュ」はセント・ニコラウス、つまりサンタ・クロースと同じです。
見えない太陽
 「プラハ城」の向こうに太陽がかがやいています。南側から眺めるプラハ城のバックに太陽が見えることは実際にはあり得ないことです。見えるはずのない太陽にクレームがついて1919年4月以降の切手からは太陽が削られました。そのためミュシャがミスを犯したという人もいます。しかし、当時プラハにもアトリエを構えていたミュシャにはプラハ城の方角はもちろんよくわかっていました。また、ミュシャはひとつの作品を仕上げるために何枚ものデッサン、スケッチをする画家です。『プラハ城切手』でもデッサンを何10回も重ねています。方角を間違えることなどありえません。
(「切手の図柄は、 「カレル橋から眺めたプラハ城聖ヴィート大聖堂とミクラーシュ教会堂」 とする説明がありますが、これも間違いです。カレル橋の上からは二つの聖堂がこのような位置関係に見えることはありません。)
 ではなぜミュシャは見えるはずのない太陽を描いたのでしょう?
 ミュシャが描いたのは天体の太陽ではなく太陽が象徴するチェコの「未来の希望」でした。
 太陽をあらわすスラヴ古代神のスヴァントヴィトは希望の象徴であり、ミュシャは太陽やスヴァントヴィト神に託してチェコの「未来の希望」を象徴的に描いているのです。
(「聖ヴィート」はチェコ語で「スヴァティ・ヴィート」と発音する。「スヴァントヴィト」を想起して民衆がキリスト教を受け入れやすくなることを想定して聖堂名にした。)
  事実と異なると批判されいったんは削られましたが、第二次大戦後の社会主義圧政の時代に何度も復刻された『プラハ城切手』には希望をたくすように太陽が復活しています。
ハート
 「プラハ城」を囲むように両側にはチェコの国の木、「スラヴ菩提樹」のハート形の葉が描かれていてます。
 「スラヴ菩提樹」を頭に飾る女性像は「スラヴィア」と呼ばれ、スラヴの理想を女性の姿で表現しています。ミュシャ作品に登場する「ハート」は、心やキリスト教の"愛"をあらわすと同時に、スラヴを象徴しておりパリ時代のポスターなどにも登場します。切手の額面表示の脇にあるハートも同じくチェコやスラヴの象徴です。
渦巻き
 周囲の枠には渦巻きの模様を飾っています。「渦巻き文」は水をあらわし、水は水を示す青色とともにスラヴの人々がひとつの民族だった太古の時代をあらわします。渦巻き模様は「スラヴはひとつ」というメッセージなのです。
 パリ時代アメリカ時代チェコ時代を通じてミュシャの作品には民族の連帯、一致を示す青色や渦巻き模様が繰り返し登場します。
ハト
 速達切手のデザインにも「ハト」を使っており、「ハト」はスラヴの人々が平和を愛する民であることを表わしています。
 チェコの民俗玩具になったりスラヴの家具などの飾りにも「ハト」はよく使われています。
 悲しみの中から強く平和を望むチェコの人々の心を表すシンボルとして、ミュシャは重要な作品に「ハト」をよく使っています。

プラハ城切手

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  チェコ最初の郵便切手『プラハ城切手』 を発行した12月18日は「切手記念日」 として独立記念と同じように位置づけられている。
 共産党独裁体制下だった独立40周年の1958年には『プラハ城切手』を見上げるスラヴィアをデザインした切手を発行した。
 スラヴ菩提樹のティアラを飾るスラヴィアは「スラヴ菩提樹」と"不滅"を表す「月桂樹」を捧げようとしており、『プラハ城切手』 には"復活"の象徴「トケイソウ」と"栄光"をあらわす「バラ」の花を飾っている。

チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
創立100年記念CDアルバム

ここにも “太陽” が

『スラヴィア』 (プラハ国立美術館蔵 1908年)

『プラハ城切手』 1918年12月18日発行

『プラハ 春の音楽祭』 (ポスター 1914年)

切手デザインと同じ方角から
プラハ城、聖ミクラーシュ教会を望む

この切手をデザインした M.シュヴァビンスキーは、1939年のミュシャ葬儀で弔辞を読んだ。

『幸いなるかな悲しむ者』
(『真福八端』より 1906年)

“太陽”は描いていない 『プラハ城切手』のデッサン
1918年

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チェコ民俗玩具のハト
ハトは、スラヴ民族が平和を愛することを表し、未来の希望を象徴する。

『果物』 (装飾パネル 1898年)

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『プラハ城切手』のさまざまなタイプは こちらから

スラヴ菩提樹はチェコの国の木。 ハート形の葉が特徴。

プラハ城切手のいろいろ

チェコ・フィル創立100年CD

ここにも “太陽” が