統一の"輪"を持つスラヴの若者にせまるカトリックの"鉄十字"
スラヴの人たちの力と統一を象徴する"輪"を手にする若者の背後には"鉄十字"を掲げて進むフランクのドイツ系カトリック司祭たちが迫っています。
スラヴ人たちが統一を保っていた大モラヴィア国はロスチスラフを継いだ甥のスヴァトプルク死後、分裂をくりかえして弱体化し周囲の国に吸収されて消滅してしまいます。若者の持つ"輪"と"鉄十字"がモラヴィア国の行く末を暗示しています。
"鉄十字"は後のドイツ騎士団(1198-1809)の象徴ですがモラヴィア国があった9世紀には当然まだ存在していません。描かれているのもドイツ騎士団ではなくフランク王国(後のドイツ)のローマ・カトリック司祭です。
ミュシャはツィリルとメトジェイが指導するスラヴの教会を執拗に攻撃しやがて崩壊させるドイツ系ローマカトリックを"鉄十字"で象徴したのです。それだけでなく『スラヴ叙事詩』の『グルンヴァルトの戦いが終わって』でポーランド、北リトアニア連合軍に敗れたことによりその後衰退の道を歩むドイツ騎士団とも結びつけて描いています。
ドイツ騎士団の"鉄十字"
ドイツ騎士団総長ウルリッヒ・フォン・ユンギンゲンの死、
『グルンヴァルトの戦いが終わって』から(部分) 「スラヴ叙事詩」