黄道十二宮 ラ・プリュムのカレンダー 1896年 リトグラフ
藤島武二 「三光」のうち「月」 ( 1905) 右は La Plume 誌のページから。
絵の下にある英詩は野口米次郎 (1875-1947 彫刻家イサム・ノグチの父) の詩。
カレンダー
「黄道十二宮」 は、シャンプノワ・リトグラフ工房の1897年のカレンダーでした。 このカレンダーに注目した 「ラ・プリュム」 誌の編集長レオン・デシャンが
「ラ・プリュム」 誌のカレンダーとして広め大好評を博しました。 その後もいろいろな使われ方をして7種ものヴァリアントが存在します。
美しい女性の横顔と宝石をちりばめた豪華なティアラやネックレス、奔放に しかし品位を失わない髪のうねり、 くまなく埋め尽くす装飾、 ビザンティンやケルトの適度にエキゾチックな雰囲気、
絶妙なバランスを保つ画面構成、 ミュシャ・スタイルの魅力が凝集した 「黄道十二宮」 が時代を超えて世界中で人気があるのは当然ともいえるでしょう。
動物の星座
「黄道十二宮」 は 女性を飾る12の星座をさし、 天体の1年の動きを表します。 ギリシア語の動物の円盤という言葉に由来する ゾディアック Zodiac
も同じ意味で、カレンダーとしての性格をあらわしています。
月桂樹
常緑樹の月桂樹は不滅のシンボルです。 勝利や栄誉と一般に思われていますが、 勝者の栄誉を讃えるために不滅の象徴を贈ったものが変化しました。 カレンダーに飾るのは月桂樹が不滅をあらわすからです。 また、月桂樹が一年の最後、休息の季節の冬を象徴しているからでもあります。
月桂樹とともに、太陽と月、昼を表すヒマワリと夜を象徴するケシなど、ミュシャは時の象徴を飾ることによってカレンダーの機能をよりいっそう高めています。
藤島武二
明治38年 (1905)、「明星」 のデザイナーでもあった藤島武二(1867-1943) は 「三光」 という連作ポストカードを発表しました。 その中の 「月 Luna 」 は、「黄道十二宮」 からインスピレーションを得たと考えられます。
「月」 を見ると、単純に形だけをまねたのではなく 「黄道十二宮」 の細部までよく理解してデザインしたことをうかがわせます。 同時に、藤島武二が
「黄道十二宮」 のカレンダーや装飾パネルからではなく、「ラ・プリュム誌 La Plume 」 を見てアイデアを得ていたことも知ることができます。