LUのカレンダー 1896年 リトグラフ
『ケレスのダイアモンドティアラ』 (19世紀前半)
Albion Art Jewellery Institute
アルビオンアート・ジュエリー・インスティテュート蔵
ワシントン・
ナショナル・ギャラリー蔵
豊饒の女神
ビスケットメーカー、ルフェーヴル・ユティル社のカレンダー。ルフェーヴル・ユティル社は、頭文字の「LU(リュ)」という愛称で現在もヨーロッパで親しまれています。
「麦の穂」と「ヒナゲシ」の花を頭に飾る女性は、農業や穀物、豊饒の女神ケレスです。ケレス(ローマ神話ではケレス、ギリシア神話ではデメテル)は「麦」と収穫の「鎌」を持つ姿で描かれますが、ミュシャはケレスの衣装に、「LU」のロゴを連想させるデザインで「小麦」と「鎌」の模様を描いています。『ムース川のビール』でもミュシャは穀物の女神ケレスを描いており、「ケレス」はコーンフレークやオートミールを指す「シリアル」の語源です。
デメテル(ケレス)の娘ペルセポネーが冥界から地上の母のもとに帰ってくる時期が春とされ、娘の帰還を喜ぶデメテルが地上に豊穣をもたらすという「四季の起源神話」もふまえて、ミュシャはカレンダーにケレス(デメテル)のイメージを描いたのです。
宣伝の力を理解していたルフェーヴル・ユティル社は、さまざまな画家にポスターやパッケージデザインを依頼しました。なかでもミュシャは人気があり、何種類ものデザインが残っています。
1994年にチェコで70年ぶりの「ミュシャ展」がプラハ城で開かれたとき、ルフェーヴル・ユティル社は展覧会スポンサーとしてミュシャがデザインしたビスケットのパッケージを復元し、展覧会の記念に配りました。