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『ケレスのダイアモンドティアラ』 (19世紀前半)
Albion Art Jewellery Institute
アルビオンアート・ジュエリー・インスティテュート蔵

1994年 プラハ城での
ミュシャ展 記念品

ワシントン・
ナショナル・ギャラリー蔵

『ムース川のビール』

 1804年12月2日にパリ、ノートルダム大聖堂で行われたナポレオンの皇帝戴冠式で、ナポレオンの妹ボーリーヌがつけていた『ケレスの麦の穂のダイアモンドティアラ』。
 戴冠式でボーリーヌは皇妃ジョゼフィーヌの裳裾
(もすそ)を持つトレインベアラーをつとめ、『麦の穂のティアラ』をつけた姿がダヴィッドの『ナポレオン一世の戴冠式と皇妃ジョゼフィーヌの戴冠』(ルーヴル美術館)に描かれている。
 その影響でナポレオンの戴冠式以降ヨーロッパの貴婦人たちの間では「豊穣の女神ケレス」を象徴する『麦の穂のティアラ』が大流行した。

『LUビスケットのラベル』

『ケレス』

豊饒の女神
 ビスケットメーカー、ルフェーヴル・ユティル社のカレンダー。ルフェーヴル・ユティル社は、頭文字の「LU
(リュ)という愛称で現在もヨーロッパで親しまれています。
 「麦の穂」と「ヒナゲシ」の花を頭に飾る女性は、農業や穀物、豊饒の女神ケレスです。ケレス
(ローマ神話ではケレス、ギリシア神話ではデメテル)は「麦」と収穫の「鎌」を持つ姿で描かれますが、ミュシャはケレスの衣装に、「LU」のロゴを連想させるデザインで「小麦」と「鎌」の模様を描いています。『ムース川のビール』でもミュシャは穀物の女神ケレスを描いており、「ケレス」はコーンフレークやオートミールを指す「シリアル」の語源です。
 デメテル
(ケレス)の娘ペルセポネーが冥界から地上の母のもとに帰ってくる時期が春とされ、娘の帰還を喜ぶデメテルが地上に豊穣をもたらすという「四季の起源神話」もふまえて、ミュシャはカレンダーにケレス(デメテル)のイメージを描いたのです。
 宣伝の力を理解していたルフェーヴル・ユティル社は、さまざまな画家にポスターやパッケージデザインを依頼しました。なかでもミュシャは人気があり、何種類ものデザインが残っています。
 1994年にチェコで70年ぶりの「ミュシャ展」がプラハ城で開かれたとき、ルフェーヴル・ユティル社は展覧会スポンサーとしてミュシャがデザインしたビスケットのパッケージを復元し、展覧会の記念に配りました。