原故郷のスラヴ民族  ― スラヴ民族の起源 ―        

青い夜空と白い星

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スヴァントヴィトのデッサン写真

三季節

1912年 テンペラと油彩  610×810 cm

スラヴ叙事詩

スヴァントヴィトの切手(1990)

ポスターのスヴァントヴィト像

「グスタフ・アドルフの死」  (「ドイツ史」から

平和を求めて
 民族大移動以前の紀元前後頃、スラヴ民族
(スラヴ語を話す人々)はバルト海と黒海にはさまれた地域に住み狩猟と農耕で暮らしていましたが、常に周辺の異民族の脅威にさらされていました。
 右側のスヴァントヴィト像には、武器を持つ若者と平和を表す少女がすがりつくように寄り添い、スラヴ民族の独立と幸福の希求を象徴しています。
青い夜空
 実際にこの作品を見ると、ひきこまれるような青い夜空が印象的です。白くかがやく星が深い青をさらにきわだたせます。
 "青"はスラヴの原点を象徴するたいへん重要な意味を持つ色です。この青い空はスヴァントヴィトの白い衣装を印象的にするだけでなく、画面全体そして「スラヴ叙事詩」全体の意味を伝える効果もあわせて持っています。ミュシャは深く澄んだ青を表現するためにデッサンをなんどもくりかえしています。
 装飾画家と誤解されることが多いミュシャは、実際にはデッサン力、画面構成力に卓越し、さらに色彩画家としても第一級の画家です。2017年の東京展では照明の演色性の問題で「スラヴ叙事詩」本来の色調でなく、色彩で語るミュシャのメッセージが伝わらず残念でしたが、「原故郷のスラヴ民族」の深く澄んだ青い空にはなかでも色彩画家ミュシャの魅力が凝縮されています。
スヴァントヴィト
 スヴァントヴィトは古代西スラヴの全能の神とされています。バルト海のルヤナ島
(現在はドイツ領リューゲン島)のアルコナに神殿がありました。戦争の神とされていたのが中世には太陽信仰と結びついて平和と希望の象徴に変わってきました。4つの顔(トリトンと混同して3つとも)、剣、リュトン形の角杯を持ち、金色の巻髪の少女と白馬を従えていると伝わっています。
 この絵のスヴァントヴィトは属性のすべてを備えてはおらず、雷神ペルン
(東スラヴでは主神)の要素もあえて描いています。しかし、腰の剣、寄り添う若者と少女、また衣装の白と赤によってチェコの人たちがスヴァントヴィト神をイメージするように描いていることは明らかです。夜空の深い青とスヴァントヴィトによって、ミュシャはスラヴが一つだった時代を表しました。
脅威
 農耕と狩猟で暮らしていたスラヴ人は周囲の遊牧民や騎馬民族に追われ、土地を求めて部族ごとに移動してロシアから中欧の広い地域に住むようになりました。この作品ではスラヴ民族の原点とともに、脅威にさらされ続けた歴史を描いていますが、若いころにパリでかかわった「ドイツ史
―歴史の情景とエピソード―」の挿絵(それも自身のではなくロシュグロスの挿絵)の経験から得た表現が見られます。
 

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