レオン・デシャン 1864-1899
同様のボースで描いたデッサンとデッサンのためにミュシャが撮影した写真。
右下は『写真雑誌表紙のイラスト』
左から『カサン・フィス印刷所』 『クリオ』
右は、フェルメールの 『画家の寓意』から。(いずれも部分)
ミュシャ・コラム
「寄せ集めのミュシャポスター」
ミュシャのポスター
『ヒナゲシの女』 あるいは 『イーゼルと少女』 というタイトルの装飾パネルとして知られていますが、右下の文字から、ミュシャ作品を宣伝するラ・プリュム芸術出版社のポスターとわかります。
ラ・プリュム社の社主レオン・デシャン(1864-1899)はミュシャを発掘し世に送り出した一人です。ミュシャに注目していたデシャンは、1897年に自社の「サロン・デ・サン」で個展を開かせ、『ラ・プリュム』誌でミュシャの特集を組むなどミュシャの紹介に尽力しました。
この作品でも、文字のない「観賞用装飾パネル」を別刷りして販売しました。 「ミュシャ」 と 「ミュシャ・スタイル」 は、デシャンのおかげで 「アール・ヌーヴォーの華」 となったといっていいでしょう。
ミューズ
ひなげしに囲まれて腰掛ける女性は「月桂樹の葉」を頭に飾っています。これはミューズの一人、芸術の女神 クリオです。
ギリシア神話では9人の「ミューズ(ギリシア神話ではムサ)」がおり、その一人「クリオ クレイオ)」は「歴史の神」でしたが、のちに「芸術の女神」、「美の女神」に変わってきました。
ミュシャはこのポスター以外でも『カサン・フィス印刷所』(ポスター)、『クリオ』(書籍)でも「芸術の象徴」として「クリオ」を描いています。
女性を囲む「ヒナゲシ(コクリコ)」は、同じく美の女神とされているヴィーナス(アフロディーテ)に捧げる花とされています。
また「ヒナゲシ」はフランスの象徴とされていますが、ミュシャの故国チェコを表す花でもあります。星のハートとともにヒナゲシを描いていることから、ここではチェコ出身のミュシャを示しています。(チェコの国の木、スラヴ菩提樹は葉がハート形をしており、ミュシャの描くハートは多くの場合チェコを象徴しています。)
ミュシャ・スタイル
ミュシャ作品にはひと目でミュシャとわかる特徴がかあり、女性を飾る花や女性のポーズも「ミュシャ・スタイル」の特徴のひとつです。
「ティアラ」や「女性を囲む花」は女性が象徴するものを示します。それに対して女性の「ポーズ」は、象徴するものをポーズで表している場合と、見る人の目を誘導する働きの両方があります。ポスターでは、女性のポーズには目線を導いてポスターの効果を確実にする働きのことが多く、『ジスモンダ』や『サロン・デ・サンでのミュシャ展覧会』、『モナコ・モンテカルロ』などがその代表で、この『ミュシャ 全作品』のポスターもそのひとつです。
文字がない装飾パネルではわかりにくいですが、ポスターを見ると、ミュシャが見る人の視線の動きを計算して巧みにデザインしているのがわかります。