寄せ集めのミュシャ?
右は 「シガリロ・パリ 」というスペインのタバコのポスターです。デザインだけが存在しポスターにはならなかったようですが、「見事な仕上げの魅力的なデザイン」としてミュシャのオリジナルと紹介している解説があり、この絵を表紙にしている画集もあります。
しかしミュシャ作品であるかどうかはたいへん疑問です。その理由は・・・・。
『ウェイヴァリー自転車』
いかにもミュシャらしく感じさせるのはポーズと装飾です。しかしよく見ると上半身は『ウェイヴァリー自転車』から、下半身は『オーストリア・ハンガリー慈善団体のメニュー』からとったものだとわかります。
『四芸術』 から
左右にあるアイリスの装飾は四芸術の『詩』から、胸のアクセサリーは同じ四芸術の『絵画』からとっています。
円形の装飾パターンとちりばめられた背景の星は『オーストリア・ハンガリー慈善団体のメニュー』をまねています。星はあるいは『椿姫』を参考にしたのかもしれませんが、単調です。
円の中のモザイクは『桜草・羽根』の『羽根』を参考にしたものでしょう。
サインも
それぞれの絵の要素を取り入れてミュシャらしく見せようとしていますが、オリジナルとコピーとは大違い。ミュシャらしい緻密さと自然なバランスはありません。ミュシャの装飾や絵の要素の意味を理解しないままチグハグに組み合わせています。右下のサインも違う時代のものをはめ込んでおり、稚拙な贋作、いわゆる「ミュシャもどき」の域を出ません。
はめ込まれたサイン
「シガリロ・パリ」